視聴率なんか気にしない? いいゾ! NHK木曜時代劇「ちかえもん」

民放では実現不可能?何気にマニアックな空気感の演出がニクイ


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出典:momoclozamurai.xxxblog.jp

 悪評高く、大河歴代ワーストの視聴率を叩きだした
松山ケンイチさん主演『平清盛』。(筆者は大好きでしたが。)

その脚本を書いた藤本有紀氏の最新作が、
現在NHKで木曜夜8時から放送されている木曜時代劇『ちかえもん

江戸時代の劇作家・近松門左衛門こと、
ちかえもん」(松尾スズキ)を主人公とした時代劇です。

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出典:dorama.matomemato.me

毎回劇中で、その「ちかえもん」がやるせなく歌う
往年の名曲の替え歌がまずシュール。

一話目・ザ・フォーク・クルセダ―ズの「悲しくてやりきれない
二話目・BOROの「大阪で生まれた女
三話目・ガロの「学生街の喫茶店

といったシブ~いラインナップ。

その日その時の「ちかえもん」の心情を上手いこと歌詞にのせて、
それを、松尾スズキさんが良いあんばいの脱力さ加減でつぶやくように歌います。

そこにわざわざ「うた・近松門左衛門」と
テロップを入れるところも気合入ってます。(制作側の。)

なぜ「ちかえもん」がそんなにやるせないかというと、
彼は今、思うように人形浄瑠璃の台本が書けず、絶不調なのです。

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出典:spice.eplus.jp

妻子にはとっくに去られ、50歳にして、70代の美しい母上(富司純子)に
毎日子供のように小言を言われる始末。
元武家の出だという誇り、若かりし頃の出世作の栄光も忘れられないのに、
現在のこの落ちぶれた体たらくったらもう…。

大阪一の大商人「平野屋」がパトロンについているものの、
そこに見限られたらもう立つ瀬がない崖っぷち状態。

教科書にわずか1行くらいしか出て来ない「近松門左衛門」や、
人形浄瑠璃」の世界を、思いっきり膨らませて、
さもこうだったに違いない、と思わせる状況描写。

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出典:news.livedoor.com

松尾スズキさんという、演技巧者だがやや地味目なルックス(失礼!)の方を
中心に据えているので、(もう、そこからすでに挑戦的!)
脇は、岸辺一徳さん、北村有起哉さん、徳井優さん、山崎銀之丞さんなどで
手堅く固め、周辺は、
小池徹平さん、高岡早紀さん、優香さん、早見あかりさんなどで
華やかに盛り上げている。

あ、松尾スズキさん、知らない方はいらっしゃらないかとは思いますが、念のため、
あまちゃん』で、若かりし頃の春子(有村架純)が
東京でバイトしてた喫茶、「アイドル」の、アイドルおたくのマスター役だった人ね。

そして、松尾スズキさんと今回W主演、
近松のことを「ちかえもん」と呼んで、何かとナツいてかかわってくる
大胆不敵な飴売りの若者「万吉」役を、
朝ドラ『ちりとてちん』で、ヒロインの貫地谷しほりさんの相手役を演じていた
青木祟高さんが演じています。

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出典:rurounikensinjoho.blog.so-net.ne.jp

この青木祟高さん、大河ドラマ『平清盛』では弁慶役、
そして、映画『るろうに剣心』では相楽左之助などを演じていらっしゃいました。

大柄な体をさらに大きく表現豊かに使い、
ちまちましたクサレ中年(失礼!)のオッサン
ちかえもん」と好対照をなしています。

劇中アニメも秀逸!


ちかえもん」の心の声を、
松尾スズキさんの絶妙な間合いのセリフまわしで面白おかしく聞かせると共に、
劇中のこれまた脱力系のアニメーションが、さらに盛り上げてくれます。

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アニメーション制作は、岡江信一郎さん。
一度見たら忘れられないシュールな世界観の映像です。(http://shinichirookae.com/

時代劇に、70年代なつメロとアニメーション。
この一見不調和に見える取り合わせが、
フォーク世代の松尾スズキさんを据えることで、不思議に成立してしまう配役の妙。

視聴率を気にするあまり、スポンサーに気兼ねして、
なかなか実験的な作品が実現し辛い昨今のTVドラマの世界。
わずかにテレビ東京系列などの深夜ドラマ枠で、
低視聴率だけどマニアックな層に高評価なものはありますが。

ゴールデンタイムを堂々と使って、作家性の際立つ作品を放映できるのは、
もはやNHKのみなのか…。

とはいうものの、そこはNHK.
ちゃんとお祖父ちゃんやお祖母ちゃんと一緒に見ても
ついていけるだけのクオリティーは保っています。

木曜時代劇『ちかえもん
次回の「ちかえもん」の替え歌が何なのか、今から楽しみです。